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中心市街地の現状と展望 ー佐賀市中心市街地の低未利用地を通してー

発表形態:
招待講演・特別講演(学会シンポジウム等での講演を含む)
主要業績:
主要業績
単著・共著:
単著
発表年月:
2013年09月
DOI:
会議属性:
国内会議
査読:
無し
リンク情報:

日本語フィールド

著者:
山下宗利 読み: ヤマシタムネトシ
題名:
中心市街地の現状と展望 ー佐賀市中心市街地の低未利用地を通してー
発表情報:
2013年日本地理学会秋季学術大会 日本地理学会発表要旨集 号: 84 ページ: 7-7
キーワード:
中心市街地、活性化、低未利用地、佐賀
概要:
2013年日本地理学会秋季学術大会(福島大学)において、シンポジウム「中心市街地活性化の方向性と課題」が開催された。報告者はシンポジストの1人として研究発表を行うとともに、全体討論を行った。
抄録:
1. 中心市街地活性化政策の停滞  2006年に中心市街地活性化法が改正され、従来の商業機能を中心とした活性化政策から、市街地の整備改善、都市福利施設の整備、居住環境の改善の3要素を加えた包括的な活性化政策へと舵がきられた。「コンパクトでにぎわいあふれるまちづくり」が謳われ、生活空間としての中心市街地の形成が図られてきた。また都市計画法の改正は郊外での大規模集客施設の立地を規制することになり、さらに大規模小売店舗立地法の指針を改定して大型店の社会的責任を重視した。しかしこのような活性化政策の転換にもかかわらず、多くの都市では歩行者通行量や居住人口、商品販売額、空き店舗数などに顕著な改善は認められない。しかも新たな中心市街地活性化政策を導入した先行都市では目標達成率は約3割に留まっている。すなわち、中心市街地活性化政策は行き詰まり、閉塞状態に陥っている。  とりわけ地方都市においては、熱意あるさまざまな取り組みにもかかわらず、疲弊が進み、改善の兆しが見え難い。これには種々の要因があり、従来型の中心市街地活性化がなされ、画一的なまちづくりが踏襲されていることが一因とされる。従来の活性化政策では手段が目的と化し、本来の生活の質を高める目標が見失われていたのではないかと思われる。 地域の実情にあわせた個性ある取り組みの必要性が求められている。「誰のための中心市街地の活性化」が根源的に問われており、本報告では、佐賀市中心市街地の実態を低未利用地という側面から議論することにした。 2. 低未利用地の増加  本研究では、低未利用地として、建物を伴わない空地、取り壊し跡地、空き店舗、空き家、廃屋を取り上げ、駐車場は除外した。  中心市街地の低未利用地を集約して利活用を促進し、まちなか居住につなげる取り組みや土地の権利交換により公共公益機能を配置する取り組みがある。旧佐賀市域では735件の空き家が確認されている(2011年7月時点)。その中でも倒壊の危険性がある老朽危険家屋は旧佐賀市域では149棟を数えた(2009年度佐賀市調べ)。佐賀市では2013年7月1日に「佐賀市空き家等の適正管理に関する条例」が施行され、倒壊の恐れ、身体生命に危害を及ぼす恐れ、不審者による火災や犯罪の恐れ、雜木雑草の繁茂や害虫等の発生による周辺環境の保全への支障、といった悪影響に対処しようとしている。危険家屋の解体費の助成制度を設けるとともに、行政代執行法に基づく家屋の解体や除草、伐採を行い、所有者に費用請求を行うことができるようになっている。これら老朽危険家屋の放置は固定資産税の減免措置がその背景にあり、また当該家屋の所有者の割り出しの困難さという問題もつきまとっている。  利活用可能な空き店舗においてもその活用は進展していない。高い賃料・取得額・固定資産税等の費用、耐震補強に伴う改修費用、地権者の利活用意思の希薄さ、権利関係と合意形成の複雑さが障壁になっている。まちなか居住の課題と同様に、所有者と利用者のマッチングの整備が求められている。さらにはこれら低未利用地の存在は、不動産の所有と利用の分離が進んでいないことを反映している。 3. シャッターの背後における高齢者の居住空間  長崎街道沿いに展開した伝統的な佐賀市の中心商店街においても、経営者の高齢化と後継者の不在により、シャッターを降ろした店舗が連担し、その一部は空き家や駐車場、更地へと変化している。しかしシャッターを降ろし廃業したものの、シャッターの背後には、高齢者の旧経営者の居住空間が従前と変わりなく展開されている。すなわち当該建物は店舗としてではなく、住まいとして利用・維持されているのである。このような視点で空き店舗をみた場合、中心市街地は高齢者の居住空間としての性格を有しており、中心市街地における高齢者世帯は増加するものと思われる。これまでの中心市街地の活性化政策はこの高齢社会に対応したものではなく、デイケアセンターのような高齢者対象の施設やフードデザート・買い物難民を生み出さない政策に方向転換すべきである。 4. 中心市街地の新たな目標設定の必要性  地方都市においては中心市街地から得られる税収は、持続可能な自治体に向けて財政の確保の点で無視できない。従来型の数値目標とともに、個性に応じた住む場所として質的に高い中心市街地を再構築する目標設定を行うことが必要であると思われる。

英語フィールド

Author:
YAMASHITA, Munetoshi
Title:
Vacant and abandoned lands in the city center of Saga
Announcement information:
Proceedings of the General Meetiong of the Association of Japanese Geographers Issue: 84 Page: 7-7
Keyword:
city center, revitalization, vacant and abandoned lands, Saga


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